伊藤智仁投手 スライダーの握り方・投げ方

球種別[スライダー, スリークォーター, 伊藤智仁, 魔球]
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もはや伝説となったヤクルト伊藤智仁投手のスライダーです。

握り方

人差し指と中指を縫い目に掛ける基本的なツーシームの握り方からややボールを回転させて握ります。実際に縫い目にかかっているのは人差し指も中指も指先だけになります。親指は人差し指側の側面で人差し指の下に添えますが、取材毎に位置が異なっているため、伊藤投手自身もそれほど重要視していなかったと思われます。逆に言えば、それくらい人差し指と中指が重要だったといえます。

握り方画像

伊藤智仁スライダー1

伊藤智仁スライダー3

伊藤智仁スライダー2

伊藤智仁スライダー4

投げ方

リリースの瞬間、手のひらを顔の方に向け(小指の外側をバッター方向に向け)、縫い目にかけた二本の指で切るようにして強い横向きのスピンを掛けることを意識して投げます。しかし、伊藤智仁投手は指先や手首で回転をかけるのではなく、手首は固定したまま腕をしっかり振ることを意識していたといいます。イメージは人差し指がボールの中心上にあって、リリースの直前まで手の平側を顔の方に向いていてリリース後に外側に向くようなイメージで回転をかけていたようです(黒木投手のスライダーもこのようなイメージでした)。

狙いどころ

右バッターのアウトコースに投げるときはバッターの胸元、真ん中でカウントを取るときはバッターの背中をめがけて投げたのだそう。バッターが「ビクッ」とするのが快感だったそうです。基本的には右バッターには、外角低めからボールに逃げていくコースを、左バッターに対しては内角低めか内角高めで詰まらせるというイメージで投げます。左バッターの外角方向(バックドア系)を投げることは稀だったようです。

球速

123㌔-138㌔

130㌔後半を計時するスライダーは当時「高速スライダー」と呼ばれました。

 変化の軌道とバッターの反応

「鬼曲がり」や「ブーメラン」とまで形容された伊藤智仁投手のスライダーは魔球という概念さえも超えもはや伝説となっています。当時ヤクルトのキャッチャーだった古田敦也氏も伊藤智仁のスライダーが今まで見た中で一番だと言いました。右バッターの体に向かっていき、ホームベース直前でストライクゾーンに軌道を変えるその変化はもはや漫画の世界。同僚だった広沢克実氏は「左バッターが空振りをした球が腹にボールをぶつけた」のも見たことがあったそうです。

バッターはスライダーがくると分かっていても打てず、その短い全盛期の伊藤智仁のスライダーには本当に手を焼かされました。スライダーも然ることながら、150㌔近いストレートにも対応しなければなりませんでした。右バッターの多くは、自分に向かってくるボールにのけぞっている間にストライクをコールされるか、外角にきたボールに届くと思って手を出すものの想像以上の鬼曲がりに空振りしてしまうのでした。

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余談

伊藤智仁投手がスライダーを覚えたのは、社会人時代。当時ストレートとカーブしか持ち球はなく、プロでやっていくために様々な変化球の練習に取り組んだ結果、スライダーを習得したとのこと。実際は、一度ブルペンで試して、使えそうだったので次の試合からすでに使っていたのだそうです(田中将大投手のスプリットもそうだったように、このような歴史に残る変化球というのは一夜で生み出されることが多いようです)。

伊藤智仁投手の持ち球はストレートとスライダーのみでしたが、もう一つの知られざる特徴は投球テンポの早さでした。古田敦也捕手も伊藤投手のテンポに合わせるようにサインを出していたといいます。

1993年6月9日の巨人戦で当時のセリーグタイ記録となる16奪三振を奪いながら、篠塚選手にサヨナラ本塁打を浴び負け投手となった試合がありました。最後の打者となった篠塚選手は伊藤投手のテンポの良さを嫌って、初球を投げさせるまでに2度もタイムをかけました。このとき伊藤智仁投手は「あの篠塚が俺のタイミングを嫌ったぞ!」と若干の慢心が出たと振り返ります。結局、外角低めに構えた古田捕手のキャッチャーミットとは異なる真ん中高めに浮いた初球の失投を篠塚選手が見逃さず本塁打にしたのでした。小さな気持ちの変化を引き出したベテランの駆け引きが、それまで完璧な投球を続けてきた伊藤智仁投手を揺さぶったのでした。

ちなみに、篠塚選手はこの本塁打がプロ初めてのサヨナラ本塁打だったそうです。 

参考動画

二人目の打者井上選手が見逃し三振に打ち取られるとき、井上選手が体を仰け反らしているが分かります。(スロー映像4:20付近から)

伊藤智仁投手が握り方や投げ方について古田敦也氏に取材を受けたときの映像です。

 

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